夢の中で僧がお告げを

夢の中で僧がお告げを

 香川県那賀郡買田村大字買田、高井数十五歳は、明治二十七年の頃に大阪天満の米売店方へ奉公致しておりましたところ、同三十年五月に足の病にかかり歩行が困難となりました。大阪の病院で三ヵ月程治療を受けましたが、いっこうによくなりません。年の暮れに故郷へ送り返されまして困っていたのを見かねた琴平町や善通寺村の有志の方々の慈善を受け、この箱車を新調してその年旧二月二十日、当山屏風ヶ浦海岸寺奥の院で、四方の皆さんの助力を受け当山を信仰致しておりました所、不思議なことに旧三月十三日の夕方に或る僧が来て言われました。
 「当山を信ずれば必ず霊験があります」
と言われ、もと来た道を帰りました。それはその夜、九時頃に一睡を催した時の夢でありました。
 アラ、ありがたい天にも登る心地のする霊夢であったと夢さめて思い、早速、車よりはい出で、拝殿にて百拝しまして、又車で帰って寝ました。翌日十五日朝、お大師さまのお蔭を頂き、両足は全快して歩行出来る身となりましたので、箱車を当山へ奉納して、額を掛ることになりました。
 明治三十一年旧四月

霊験譚カテゴリの最新記事