私事は去る昭和三年拾参歳の初夏より不図脊髄病に罹り高松の赤十字病院に入院致しましたが、軽症で有りました為め二ケ月餘りにして退院する事が出来ました所が、其の秋家事の手伝いをしたのが原因で再発し起る事も出来無い重病と成りました。此度は全快の見込み覚束なく此の上は神仏におすがりするより他に致し方なしと悟りましたので、自動車と人の背を借りて漸く此の奥の院へ辿り付き、お籠りをさせて頂く事と成りました。其して毎日御加持をして戴き一生懸命に心信して居りましたが、三日目に始めて立つことが出来、約一ヶ月程にして自由に歩行する事が出来る様に成りました。是れ偏へに御大師様の慈悲の御利益と深く喜んで謹告する次第であります。
昭和五年四月十五日
香川県三豊郡比地
細川千代子
南無大師遍照金剛